我が家の近所のとんでもなく急な坂
道を歩いているとき、
あなたはどこを、何を、見ていますか?
或いは、何を見て歩きたいですか?
どうしてそんなことを言うかというと、
私は、自宅の近所では圧倒的に空を見て歩くことが多いということに、
あるとき気づいたからです。
自宅から最寄駅の目黒までの間に、
行人坂というとんでもなく急な坂があります。
あまりに急勾配なので、初めて見たときはかなりびっくりしたものです。
なかなか体力が試される坂でもあります。
こちらが広重の描いた行人坂。
ここらは古くから人通りの多いところだったらしい。
目黒駅までは
権之助坂という比較的緩い坂
(若干距離が増えるのですが)もあるし、
さほど変わらない距離のところに不動前という駅もあって、
こちらまでの道はまっ平らです。
なのに、
私は圧倒的に行人坂を使います。
急なのは別として、好きだから。
(駅に一番近いのもあるけど)
なんか…人通りは多いのに、
いつも晴れ晴れとした気持ちで歩けるんですよね。
それが何故なんだろう?と考えたとき、
坂があまりに急勾配な故に
上がるときも下るときも、目の先に空がある。
ということに気づきました。
坂に行くまでには、目黒川があって
太鼓橋というわりと広い橋がかかってて、
ここもなかなか見晴らしが良いのです。
こちらも広重。かつての太鼓橋。
橋を渡ると、先ごろホテルの冠を掲げた雅叙園。
坂の途中には、大黒天をお祀りするお寺があり、ホリプロがあり
(坂沿いの壁に常時、直近のお芝居の巨大なポスターが貼ってあるのです)。
このあたりは、坂がとんでもなく急なことさえ除けば、緑が多く
春には桜だらけ。秋は銀杏の鮮やかな黄色。
平らな道を歩いているときに、人や道路、車に目がいきやすいのに比べて、
坂道では、視界に入る空や街路樹の分量が多い気がする。
だから好きなんだよね~
と、言う話を父に話したら、
いたく気に入って
「そうだねぇ。『坂の上の雲』だよね
と何度も言っていた。
え?『坂の上の雲』(小説の題名ね)??
なるほど、それを連想するか・・・
なんか違うんだけど、まぁいっか・・・と。
ちなみに『坂の上の雲』とは
作者曰く、坂の上の天に輝く雲を目指して一心に歩むが如き
当時の時代的昂揚感を表したものだそうで、
ドラマのオープニングで、毎回渡辺謙のナレーションで
「近代日本を作るため、青雲の志を抱いた彼らは、あくまで楽天的であった。
上ってゆく坂の上に一だの雲が浮かんでいれば、彼らはそれをつかまんとして
上ってゆくだろう……」
と語っていたそうです。